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 WIREDの最新号の特集企画「これからの音楽」が、なかなか興味深かったです。基本的にはWIREDらしく最新のテクノロジー=インターネットサービスから、未来の音楽像を描き出そうとする内容でした。ダウンロードからクラウド・ストリーミングへ推移して以降、聴き放題サービスで台頭したSpotifyが違法ダウンロードを駆逐するというとらえ方も面白いし、リスナーの趣味に合わせた音楽チャンネルを紹介するPandoraや、音源販売や物販をサポートし、自由な値段設定などもできるBandcamp、今や一大音楽メディアに成長したPitchforkのインタビューなど、そのどれもが開発者がリスナーやアーティストに向け、DIYなスタンスを探して生まれてきたことが指摘されていました。そういった音楽のネットサービスの進化だけではなく、現在における音楽レーベルのあり方や、アイスランド(ビョークやシガー・ロスを輩出)のシーンを取り上げることで、古き良き音楽制作スタイルによる、クリエイティブの利点にも触れることで、より総合的な記事に仕上がっていて、なかなかに読み応えがありました。

 これらを一読して感じたのが、聴き放題系のストリーミング再生サービスが台頭に関しては、昔のラジオ全盛期にも似ていると思いました。もちろんレコードを所有せずに聴くという意味においてですが。ただ、これらの聴き放題サービスはいかに楽曲数を獲得するかが肝になるので、自然と大衆向けの路線になるでしょうし、その穴はマニアックなネットラジオが補完していくのでしょう。そういった中で今後必要となるのは、音楽の体系付けの作業なのかなとも思いました。YoutubeやSoundCloudなどに存在する膨大な音楽データは時系列が無く、70年代も2000年代の音楽も同列に混在しているので、それだけだと何かアタマのなかが混沌としてくるような気がします。
 例えば若いミュージシャンにインタビューしていたときに好きな音楽をいくつかあげてもらったときに“それらがどうつながったの?”と聞くと、“youtubeで聴いたからよく分かんない“という、やり取りがあったりします。今となってはよくあることですが、考えてみると聴き方が逆転しているんですよね。だっていきなりブートのライブビデオにたどり着けちゃうんですから。昔ならまずレコードを買ってブートの広告などで情報を集めて、ブート屋で視聴してゲット!という、一連の流れをすっ飛ばしているんですね。こういう聴き方は感覚的にチョイスするのには適していますが、自分が好きな音楽の影響源を探って、遡るような行為にはあまり向かないので、それらを整理しておくことも大事だなと思います。遡ることで理解が深まり、聴き方にも幅が出るのも音楽の楽しい部分ですから。そういう意味では今回の特集で出ていたリコメンデーション・サービスの進化は、あまりにそれに頼ると、視野が逆に狭まってしまう危険があるとも思いました。
 新しい音楽との出会いはショッキングな方が良いし(その方が覚えている)、そういう意味でもライブや大音量の環境で体験することで一気に視野が広がることもあります。ライブの動員が増えている今の現状は、そういった部分が原因なのかもしれません。こういったネットのサービスの充実によって、スポットが当たりやすくなったのは、DIYな音楽活動をしているアーティストなのかなーとも思います。実際にはLAのビートシーンやUSのインディR&Bなどは、こういったサービスをフル活用して、
面白いシーンを作っているので、こういった流れは当分続くのかな、と。個人的にはDaft Punkの新作のように、メジャーにしかできない良さもあるのでそちらにも期待しつつ。何かあまりうまく着地していないですが、そんなことを考えさせられるような良い特集でした。