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更新が遅れましたが、先月の28日に代官山unitへThundercatのライブを観に行きました。Thundercatは今をときめくFlying LotusのレーベルBrainfeederに所属するベーシスト/アーティストです。ニューアルバム『Apocalypse』で見せたフュージョン&エレクトロニクスなサウンドが各方面で話題ですが、ベーシストならではのプレイヤー魂もありつつ、音楽的にも優れていて良い作品だと思っています。Thundercatは名ベーシストを多く輩出しているLAのハードコア・バンドSuicidalTendenciesに現在も在籍していて、彼のプレイを初めて観たのはThundercat名義ではなくSuicidalのライブ(サマソニ2007)でした。そのときは“太っとい音を鳴らす黒人のベースだな”くらいにしか思っていませんでしたが。この日のライブはレーベルBrainfeederのリリース・パーティであったため、他にもLapaluxやTeebsといったアーディストも出演していましたが、諸事情でThundercatだけを観ました。会場は大盛況でミュージシャンを含めた関係者も多く、期待度の高さがうかがえました。Thundercatはトリオ・スタイルのバンド編成で、新作のエレクトロ・フュージョンな世界観を再現するよりも、生楽器で再構築するといった趣き。サポートのキーボードとドラムの演奏もよく、中々に楽しいパフォーマンス。ドラムがパワー・ヒッターだったこともあって、ジャズロック的なニュアンスもあり、たまにTony Williams Lifetimeを思わせるようなタイトなアンサンブルもありで(ギターはいませんが)、その本格的にジャズを求心する様は、ブルーノートなどのジャズ・クラブでもウケそうでした。
Thundercatが使う楽器はIBANEZの6弦ベースで、しかもセミアコにフラット・ワウンド弦という個性派仕様。エフェクターはMooger-Foogerのローパス・フィルターを使って、ソロをリードするときにファンキーさを演出するというオーソドックスなスタイル。そして何と言っても、彼のファルセット・ボーカルが良かったです。基本的にはベースでコードを弾いて歌うという“弾き語りスタイル”で作曲しているので、どれもメロが良い。なのでエレクトロだろうと生演奏だと、そこにブレがないのが一番の強みだなと思います。
とは言え、エレクトロを織り込んだセットで、彼の歌がどう映えるかも聴いてみたかったです。歌も曲も良いのですが、全体的には優等生タイプという感じだったので、スクエアプッシャーみたいなぶっ飛び感があったらさらに魅力的なのにな、とも思いました。(※2人ともジャコ・パストリアスを敬愛しているという点では共通していますね)実際にライブ前にThundercatに会うタイミングがあったのですが、マイペースできさくな感じだったので、そんな彼の人間性が全面に出たパフォーマンスでした。ジャズ/フュージョンなどの音楽を現代のフォーマットで再構築するアーティストが注目されて、多くの人に支持されているというのは健全だし、良いことだと思います。こういうアーティストを観るとアメリカは懐が深いなと、感じてしまいますね。