暑いですね、と書きたいところですが、実際には梅雨が逆戻りしたような過ごしやすい気候が続いています。
とは言っても夏なので、真夏にオススメのワールド・ミュージック盤を数枚紹介しますね。

Ebo Taylor
『Conflict』Ebo Taylor
こちらは試聴機で聴いてメロメロになってレジに持って行った一枚。
エボ・テイラーはガーナ出身のギタリストで、1950年代あたりに
西アフリカで勃興するハイライフの音楽シーンで有名なプレイヤーです。
調べてみたら、悪天候で中止になった2011年のメタモルフォーゼに
招聘されていたんですね。あの時、キャンセル当日に都内の各ライブハウスで
急遽振り替え公演が行われていましたが、エボ・テイラーのバンドは
リキッドルームに出演していて(!)、思い起こせば僕はあの日、
リキッド前までいってあまりの行列に、さっさと帰ってしまったのですが、
今思えば観ておけばよかった! と、後悔してもしゃあないのですが。
エボ・テイラーの最近についてはKen Hidakaさんのブログに詳しく書かれています。
これは最近再発された1980作のリリース作で、ハイライフ+ジャズ+アフロ・ビートなどを
掛け合わせたサウンドが展開されています。簡単に言うと、個人的には“気怠いユルさが最高”なのですが、
ラッパ隊のルーズさあたりは確かにハイライフっぽいなぁという印象。
例えば同じアフロでもフェラ・クティだと演奏が超絶タイトなので、聴くときも多少の気合いが必要ですが、
こちらは気兼ねなく聴ける間口の広さが非常に素敵です。レゲエで例えるのであれば、
ボブ・マーリーではなく、B級ルーツ・レゲエ・バンドのあの心地よさに近いものを感じます。
[ベスト・シチュエーション:真夏の炎天下]

marius cultier
『Ouelele Souskai』Marius Cultier
これもレコ屋の試聴機で出会った一枚。Marius Cultierはフランス領のカリブ諸島マルティニークで
活躍したキーボーディストの1975年作のリイシューです。フレンチ・カリビアン・グルーヴの
最高傑作なんて書かれていますが、その正体はマルティニークで誕生したヨーロッパ+アフリカの
ダンス音楽のビギンやアフロ・ファンク、ラテンなどを取り入れたといった内容。
ビートの押し出しが強いアフロ調ナンバーから軽快に跳ねるフレンチ・カリビアンまで、
疾走感のあるグルーヴがカッコイイです。Mariusのグイグイと引っ張るピアノ、
ローズとシンセの両刀プレイも素晴らしいですね。
[ベスト・シチュエーション:夕暮れ]

rivastarr
『Hand In Hand』Riva Starr
こちらは最新盤。イタリア出身のDJ/プロデューサー。
ハウスをベースとした4つ打ちにジプシー音楽などを掛け合わせた、
ハイブリッドなダンスミュージックが売りのRiva Starrの2作目。
ビートの強さよりもジプシーからマカロニ・ウェスタン、サイケデリックなネタ使いで、
イタリアの辺境サウンドを見事にダンス音楽として昇華しています。
例えるなら、激渋なファットボーイスリム。ネタは渋いんだけど、
サウンドの構成にポップさがあるんですよね。今のままだとワールド好きな
マニア向けですが、化けるポテンシャルを持っているので、今後注目です。
[ベスト・シチュエーション:熱帯夜]

new zion trio
『Fight Against Babylon』New Zion Trio
鍵盤家のジェイミー・サフト率いるトリオの2011年作。サフトはジョン・ゾーン界隈の人脈で活躍していて、
わりと前衛に寄った作品をこれまでリリースしていますが、
Zionという名からイメージされる通り、このトリオでは“ピアノ・ダブ・ジャズ”を
披露しています。バンドはブラッド・メルドーなどで活躍するラリー・グレナディア(b)と、
カーキ・キングでもたたいているクレイグ・サンティアゴ。
ジャズ・トリオらしく隙間を生かしきった冷涼でミニマルなダブを聴かせてくれます。
実験的にならずにストレートにジャズとルーツ・レゲエのリズムを掛け合わせるあたりが、
洒落たピアノ・ダブや空間処理だけを施したジャズ・ダブとは、一線を画していて良いです。
[ベスト・シチュエーション:真夏のクール・ダウン]

あと最近一番ホットなニュースを1つ。まさかのウェイラーズ来日!!!(11/2-4@ブルーノート東京)
そう、あのボブ・マーリー&ザ・ウェイラーズのバックバンドです。
私がベーシストとして一番リスペクトしているファミリーマンことアストン・バレットが来日するとは!!!
ウェイラーズのライブが観たいがために、海外公演に行こうとまでしていたくらいだったので、感動もひとしおです。
ご存じの方もいると思いますが、ボブ・マーリーは気に入らなければ同じ曲を何百回でもやるという
徹底的な完璧主義者だったそう。そのせいもあって究極にリファインされたレゲエ・ミュージックなのだと思っています。
そうだからなのかは直接本人に聞いてみたいのですが、
ファミリーマンのベース・ラインは他のレゲエ・ベースには無い、一種独特の旋律が多いのです。
ボブの来日公演のとき生まれていなかった自分にとっては、当事者の演奏を聴ける最初で最後の機会、
それを生で観れるとなると……もう聴く前から涙がちょちょ切れそうです。