今回は佐久間正英さんのことについて書きたいと思います。この記事自体はずいぶんと前に書いていたのですが、何だか最後の部分が納得できなかんったので、ずっと投稿できずにいました。佐久間さんはGLAYやJUDY&MARY、BOOWYなどを手掛けてきた日本語ロックの草分け的なプロデューサーであり、ミュージシャンでもあり、物腰の柔らかいとても聡明な方です。そんな佐久間さんとは前の会社を辞めてから縁があり、お仕事のお手伝いをさせてもらったりしていました。

ご存じの方もいると思いますが、佐久間さんはスキルス性の胃がんを患っていたことが発覚し、余命宣告も受けていました。一緒に仕事ができると喜んでいた矢先のことだったので、ショックを受けていました。そんな佐久間さんはガンの宣告を受けたあと、脳への腫瘍の転移が見つかり、手に障害が出たのですが、摘出手術を受けて成功しています。その後、佐久間さんはギタリストとして数本のピアニストの早川義人さんとのデュエット(客演もあり)で、数公演のライブを敢行しました。

僕は佐久間さんが始めたライブ・レコーディングの手伝いも兼ねて、東京で行ったクラブクワトロとLast Waltzのライブを拝見することができました。特に9/28に渋谷クラブクワトロで行われたライブに関しては各媒体にレポートが掲載されたりしているので、どんな曲を演奏したかとか、佐久間さんの特技が「子作り」だとか、そういった実況中継的な解説はここでは省きますが、いずれにしても素晴らしいライブでした。

ライブレポとは違う目線で書かせてもらうと、佐久間さんが脳腫瘍を摘出したのは最期に楽器が弾きたい、音楽の表現者として人生を全うしたいんだと、僕は思いました。長年、音楽プロデューサーでもあり、大学で教鞭を振るう立場でもあった佐久間さんですが、根本にあるのは長年、楽器での表現に全力を注いできた生粋のミュージシャンだということ。ライブのリハが終わったあと、ファースト・セットが終わったあとに、たびたび“体調悪いなぁ”と言いながらも、ステージに出て行く後ろ姿はちょっと楽しそうだったり、ステージから戻ってきたときのお顔も、やっぱり楽しそう。そんな佐久間さんを見ていると、こちらも微笑ましくなってしまいました。ギターの演奏については、僕の中では佐久間さんのギターはしなやかで飄々とした印象を持っていました。
※そんなに何度もギターを弾く姿を拝見したことはないので語弊はあるかもしれません。

もちろん体調が良くなったとはいっても本調子では無いので、演奏もたまにあやしかったり、たどたどしくなったりもしますが、とにかく表情が生々しくて、感情の塊のような音でした。鬼気迫るというのもやぶさかですが、表現者として希求する力の強さを感じ、ああ、佐久間さんはギターを弾いているこの瞬間に、自分の魂を補完しているんだと。じわりじわりと心を揺さぶられるような思いでした。その演奏する姿は今だに鮮明に脳裏に焼き付いています。

そんな佐久間さんの演奏を見ているうちに、最終的に自分が何をするのかというのは、自分の魂を満足させることなんだというシンプルなことを今更ながらに理解できた気がしました。やりたいことをやるというのは、こういうことなんだって。

ありがとう、佐久間さん。安らかにお眠りください。