仕事が立て込んでいて直前まで悩みましたが、行ってきましたフィル・レッシュ@フジロック【Field Of Heaven】。デッド未体験の自分ではありますが、2008年のBonnaroo Music Festivalで観たPhil Lesh & Friendsのライブが素晴らしすぎたので、あの体験が忘れられず足を運んできました。元々ベース弾きの自分としては、やっぱりデッドと言うとフィルが奏でる、あの奔放で重低音の効いたベースの音でデッドの音楽を認識してしまうものでして。それもあって、Bonnarooのときにフィルのベース音で何度鳥肌が立ったことか。そんな体験もあったので、フジのField Of Heavenのステージ中央にフィルのEdenのベースアンプや最近使っているRitterのシグネイチャー・モデルのベースなど、一連の機材がセッティングされているうちに“ああ、ついにこのときが来たんだ”と、テーパー・エリアで録音の準備をしながら、ひとり肩をふるわせていました。

 前回のブログでも書きましたが、今回はPhilが経営するライブハウス/レストランで毎晩演奏しているバンド=Terrapin Family Bandのメンバーを引きつれての公演でした。編成はギターがGrahame Lesh(Philのご子息)、Ross MF James(g&vo)、Scott Griffin Padden(k)、Alex Koford(ds&vo)、Joardan Solly Levine(ds)、Emily Sunderland(vo)にPhilという7人編成。1曲目「New Speedway Boogie」(Wokingman Deadに収録)で、空気を震わせるようなフィルのベースが会場中を包み込みました。ボーカルを取ったのは息子のGrahameですが。ボーカルは曲によって各メンバーが歌うスタイルでした(もちろんフィルが歌う曲もアリ)。もちろんデッドとは各プレイヤーの演奏スタイルも声も違うのですが、とにかくフィルのベースが圧倒的な存在感を放っているので、物足りなさを感じることはありません。もう何なんでしょうか、あの演奏は。。。デッドはいわゆる演奏力の高さで評価があったわけではないので、中々に各奏者にフォーカスが当たることはそうそうにないのですが、やっぱりPhilの演奏は素晴らしいです。どこがすごいのかというと“逸脱感”に限るでしょう。通常ベースというとドラムと一緒にリズムを意識してグルーブを作るのが最も重要な役割ですが、フィルはそこからも逸脱しようとします。ツインギターが演奏するリズムの合間を縫うように、異なるタイミングでフィル(おかず的なフレーズね)を入れたりする。そのセンスがハンパないのです。もちろん重低音を効かせることで、支えるのではなく“音を漂わせる”ニュアンスを出していくところも“逸脱感”という意味ではフィルの天才的な感覚と言えます。ビートを紡いでギターやボーカルを支えるのではなくて、あくまで呼吸するようにベースを間を奏でるのが、やはりこの人の真骨頂ではないかと感じました。ジャンルは違いますがブーツィー・コリンズのように瞬間的に間を捉える感覚、チャーリー・ヘイデンの独特の空気感とも、フィルは似ている部分があると思います。あとはジャック・キャサディですね。

 ベース目線でずいぶんと語ってしまいましたが、3曲目の「Bird Song」ではフィルがボーカルを取りました。正直、2008年のときよりも少しピッチが取りずらそうな印象もありましたが、ガルシアの代わりにボーカルを取るフィルの姿は感動的でもありました。個人的なハイライトは「Lady Was A Fan」〜「Terrapin」の流れ。Terrapinのラストを飾るリフレインのフレーズが今だにアタマから離れません。ツェッペリンのような完成度の高いリフとは違うのですが、メロウながらにハイな感じがある印象的なフレーズはデッドならでは。そして、アンコールのラストはフィルがボーカルを取る「Box of Rain」! デッドのラストショー(95年7月のシカゴ公演)の最終曲としても知られていますが、あまり演奏しないレアな曲として知られています。この曲の演奏を聴いたときに、前回のブログで書いたフィルが今放つメッセージをしっかりと受け取れた気がしました。デッド未体験の僕が言うのも何ですが、デッドの音楽はCDで聴くとやっぱりレイドバックした印象を受けるのですが、Bonnarooのときも今回のフジロックでも音源(ライブ音源を含めて)とは違う、陶酔感や心に響くダイナミクスがあるものなのです。フィルのベースもその場でしか感じ得ない、あの空気を震わせるニュアンスはやっぱり生で見てこそなんだと、改めて感じました。

 ここまでフィルの生演奏の素晴らしさを書いておいて何なのですが、今回は僕の人生で初めてのテーパー(ライブ録音ね)をやってみました。普段ライブ映像の収録仕事で使っているRODE NT4(ステレオ・コンデンサーマイク)とTASCAM DR-60Dを使って24/48のWAVファイルで録音。その後、データをWAVES API2500、Puig Child 660、IZOTOPE Ozone5などを使って、できるだけ当日耳に聴いていたニュアンスに近づけるために補正をしています。ちなみにフィルのベースを重低音を最大限いかすためにローカットはまったくしていません。以下のURLにデータ(24/48のWAVなのでかなり重いです)は置いてあるので、観たかったけど行けなかった人、この文章を読んでちょっと聴いてみたくなった人は、ダウンロードして聴いてみてください。もちろん、ライブの音声データのシェアは自由です!

写真 (9)

【1st Set】
https://www.dropbox.com/s/7e5g5980oowopbw/Phil%26Terrapin%40FUJIROCK-1stSet.zip

【2nd set&Encore】
https://www.dropbox.com/s/83pkx3a4o0v8jrm/Phil%26Terrapin%40FUJIROCK-2ndSet.zip

【Set List】

Phil Lesh and The Terrapin Family Band

SET1
#1.New Speedway Boogie /GL
#2..Cassidy /RJ
#3,Bird Song /PL
#4.Up On Cripple Creek /GL
#5.My Charlie /ES
#6.Behind Your Eyes /AK
#7.The Wheel /All

SET2
#1.Scarlet Begonias /GL
#2.Down By The River /AK
#3.Wind & Roses /GL
#4.LWAF /PL
#5.Terrapin /All
#6.Touch Of Grey /AK
#7.Lovelight> / RJ
#8.Cumberland /All

Encore
#1.Midnight Hour /ES
#2.Sweet Jane /RJ
#3.Box Of Rain /PL

Phil Lesh – Bass and Vocals
Grahame Lesh – Guitars and Vocals
Ross MF James – Guitars and Vocals
Scott Griffin Padden – Keys
Alex Koford – Drums and Vocals
Jordan Solly Levine -Drums
Emily Sunderland – Vocals
 
Field of Heaven Stage Fuji Rock Festival
Naeba Ski Resort Niigata Prefecture, Japan.
Saturday July 26, 2014