フェス・シーズンが一段落した秋は、毎年新譜ラッシュの時期。チェックする作品が多すぎて忘れてしまいそうなので、メモ書きがてら良盤紹介を。まずはOctave Minds『Octave Minds』。Chilly GonzalesとBoys Noizeのユニットですが、生楽器とシンセなどの打ち込みのバランス加減の絶妙さという点では最近の作品の中でブッチギリに良いです。ゴンザレスのフレーズをこうやってミニマルに扱ったBoys Noizeの手腕とも言えますが、彼ら(Boys NOize)は脂乗ってきてるなーという印象がありますね。続いて、生音系+シンセで面白かったのは『Shade Themes From Kairos』。これは『Kairos』という実験的なショート・ムービーのサントラですが、ヘヴィ・ドローンの雄SUN O)))のSteven O’Malleyやオーストラリアのシンセ奏者が参加したインプロヴィゼーション。往年のクラウト・ロックとヘヴィドローンが混ざっていながらも、昔の映画音楽な質感のサウンドが新鮮でした。
 と、わりと前衛的になってきたので、ちょっと戻しましょう。続いてテキサス・オースティンのエキスペリメンタル・バンドThe Octopus Projectの『Fever Forums』。平たくいうとBattles的なマスロックをグシャっと曲げて、さらにガッツリとシンセが入っているので、エキスペリメンタルな感じもあるのですが、全体的にポップな質感なところに好感が持てます。シンセの名機Moogが主催するMoog Fesにも出ているんですねー。確かにテルミン使いがハンパないです。あと、電子音系ではLee Gamble『KOCH』も良かった。インダストリアルから音響テクノとダンス方面からドローンまで全方位的ですが、世界観はひたすらにストイック。Labyrinthに向かう車の中でお世話なった一枚です。
 Labyrinthの車内BGMのネタが出たので、このまま電子音系をあと2枚。会場とスタッフホテルを行き来するときによく「何すかコレ?」と聴かれたのがFrancis Bebeyの『African Electro Music 1975-1982』。カメルーンのギタリスト/電子音楽家の曲をコンパイルした作品。少し前にリリースされたものですが、形容するなら最近ちょっと話題になったナイジェリアのWilliam Onyeaborのコンパイル作『Who is William Onyeabor?』に近い感触で、カメルーンの伝統〜大衆音楽を電子化していった……そんなアルバムです。生演奏にシンセが混ざる感じに加えて、独特のリズム感、そして欧米ではみられない剥き出しのシンセのサウンドと、この手のシンセ黎明期のアフリカ電子音楽はホント面白いです。最後は場所が変わってアメリカのニューエイジ音楽をコンパイルした『I Am The Center』。1950年代から90年代にかけての音源を集めた作品ですが、50年代はハープシコードの独奏やクラシカル、フルート独奏、そして後半はシンセ・アンビエントと、時代によって変わるニューエイジ音楽が楽しめます。各アーティストの詳細な解説も乗っているので、資料的な価値もありますね。
 ラストはLAラテン・ファンクバンドのJungle Fire『Triopicoso』。これは最近のLAのジャズ・ファンク〜ブレイクダンスシーンで注目される12人組バンド。アフロ・ビートを緩めて、さらにパーカッションを加えた独特のグルーヴがたまらない一枚。ライブは間違いなさそうなので来日したら絶対観に行きたい! ほかにもビート・ミュージック、グライム、レゲエなどなど、いろいろと良作はありますが、それはまたの機会に。

【Octave Minds】

【Shade Themes From Kairos】
https://www.youtube.com/watch?v=w1gp8up8oyM

【The Octopus Project】
http://theoctopusproject.bandcamp.com/

【Lee Gamble】

【Francis Bebey】

【William Onyeabor】

【I Am the Centerのサンプル】

【Jungle Fire】