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To Pimp A Butterfly/Kendrick Lamar
Sounding Lines/MVOT
Tuxedo/Tuxedo
Choose Your Weapon/Hiatus Kaiyote
Sleepstep/Dasha Rush
Stretch Music/Christian Scott
In Time/DRY & HEAVY
Sound & Colour/Alabama Shakes
Lifesaver Compilation/V.A.
Peace Love Music/Swindle
Amanecer/Bomba Estereo

今年はまったくブログを更新していませんが、なぜそういうモードな一年だったのかは正月にでも考えるとして、とりあえず2015年もたくさんの音楽を聴いたので私的ベストアルバムを選びたいと思います。というか、アルバム単位での選出は去年(2014年)やっていなかったのか。。。。まぁ、2015年は、どのジャンルを差し置いてもKendrik Lamarでした。コンプトン出身、といえば世間的には今、N.W.A.の伝記映画『ストレイト・アウタ・コンプトン』の話で持ちきりですが、Kendrickはそういった出自からのハスラー街道的な匂いは皆無で、優等生ラッパー的な立ち位置(ある意味イージーE以外のN.W.A.の高学歴の人たちもそうでしたが)。『To Pimp A Butterfly』は、コンプトン……果ては西海岸のラップ・カルチャーの伝統を包括しつつも、LAビート、ジャズといった2015年の西海岸の音楽カルチャーを吸い上げつつも、ヒップホップの枠を越えた作品、、、という意味でも音楽誌に刻まれる名盤ですね。その意味では待望であったはずのDr.Dreのキャリア終焉作『Compton』は、完全無敵なヒップホップアルバム!のはずでしたが、Kendrickの作品を聴いてからだと、どうも古くさく聞こえてしまったのが2015年の刹那的な瞬間でした。リリースは2014年になりますが、D’Angelo『Black Messiah』やMoodymannのセルフタイトル作、2015年だとTheo Parrish『American Intelligence』、そしてまさかのFUNKADELICの33年振りの復活作『Shake The Gate』まで、2014〜2015年はブラックミュージックにとって大収穫の時期でした。そんななかで真新しさはないものの、ディスコ/ブギーの文脈で評価を受けたUSモダン・ファンクのシーンも限定的ではありつつも充実していました。Dam-FunkはもちろんSoul Clap、そしてStone Throwの貴公子であったメイヤー・ホーソーンのユニットTuxedoのデビュー作は今年よく聴いたアルバムでした。あのヒネリはないけどそこそこに良いメロディと凡庸なビートのバランス具合が良いんですよね。なんか行きつけの定食屋みたいに、美味くもないけど不味くもない感じがあって。
テクノ方面に話も移すと、Petre、Levon Vincent 、Kozeのミックス、あとNOBUさんのミックスも良かった! あえて挙げるならTony Allen加入後のMVOT(Mortitz Von Ozwald Trio)のアルバムが安定して良かったなーという印象。このアルバム、相変わらずMVOTらしい高水準な出来でしたが、特筆したいのはエンジニアをリカルド・ヴィラロボスが担当していること。リカルドはホントに耳が良い。低域、とくに丸いながらにしっかりとアタックのあるキックの質感は、2015年のダンスミュージック系のなかでもぶっちぎりで耳を奪われました。個人的にはもっといろんなアーティストのミックスを担当してほしいなーと思っています。ダンスものではLive At Robert Johnsonのコンピ、『Lifesaver Compilation 2』もすこぶる良い出来でした。このあとでアップ予定のベストライブアクトにも登場するであろう、ATAがレジデントを務めるRobert Johnson。Massimilliano Pagliaraの「Phasing Down The Sea」は今年の私的ヘビープレイ。アンビエント方面ではDasha Rushのアルバムを今年はよく聴きました。ラスター・ノートンからリリースするのを本人は迷っていたそうですが、このアルバムはDashaのキャラもしっかり出ているので、結果としてはよかったんじゃないかなと思ってます。Floating Pointsは各方面で絶賛の嵐ですが、個人的にはやりたいことは分かるけど表現がくどくて好きではなかったです。
同じクラブミュージックのシーンでもベース系でズバ抜けてポップでオリジナリティに富んでいたSwindleの最新作『Peace Love Music』。ジャズの要素を巧みにベースミュージックに持ち込んだ彼ですが、今作ではブレイクビーツ、聴きやすいベースミュージックのアレンジに取り組み、さらに普遍的なダンス・サウンドに挑戦しています。そしてそんなベースミュージックの世界的なブームの影響を受けたBomba Estereoはもともとバンド・サウンドでクンビアやダンスホールを織り交ぜたコロンビアのバンドでしたが、最新作ではベース系サウンドをたっぷりと取り入れて進化しつつも、リリアナのカッ飛んだメロディセンスが炸裂した、ポップに聴ける素晴らしい作品になっています。
今年一番のダークホースはHiatus Kaiyote。ザックリいうとオーストラリアの男女混合アフロジャズ・バンドですが、彼らの最新作『Choose Your Weapon』は素晴らしい出来でした。パッと聴くとポップで聴きやすいのですが、よく聴くと変拍子やポリリズムを多用していて、複雑でカッ飛んだアレンジになっている。でも、それを“やってまっせ”的な主張が皆無で、そのあたりの●●は爪を隠す的なセンスが最高だなーと思う次第なのです。そのままジャズ路線で続けると、何気にこのジャンルが今年一番収穫が多かった気もします。フライング・ロータスまわりからも認知度を上げたLAジャズ系(カマシ・ワシントンとかね)、あとはアルメニアのTigran Hamasyanなども今年の大きなトピックでした。が、特にジャズとなると演奏者の表現力を評価したいのが、僕のポリシーでもあり、そういった意味では先述のTigranはもちろん、Christian Scott『Stretci Music』が白眉でした。ニューオリンズ出身のトランペッターらしく伝統を重んじつつも(けっこうドラマチックだけどね)、現代音楽やポストロックにもバランスよく接近するスタイルは、2015年のクロスオーバー・ジャズのなかでも最もバランス感に長けたサウンドだと思います。
で、最近、本当に勢いのないロック界隈ですが、それもやはりシーンを代表するようなアイコンの不在が大きいのでしょう。近年ではブルースやフォークによった回顧主義&リミックス的なサウンドが評価されていますが、そのなかでもよかったのはアラバマ・シェイクスの『サウンド&カラー』。このアルバムが2015年のロック・アルバムのなかで飛び抜けて良かったのは“音の良さ”。ミキシング、アレンジによる聴かせ方で、あえてペラっとしたドラムの音、左右に振ったギター・アンサンブル、ボーカルのリバーブ感、ストリングスの大胆なアレンジなどなど、リズム&ブルースを主体とした古き良きロックを、ここまで新鮮に響かせられんだ、という意味でとっても革新的でした。ほかにもFather John Misty、The Arcsなども良かったですが、どれも古風なサウンドをどう聞かせるかという意味で面白い作品でした。あと、今更新しさは無いですが、マスロックの発展系バンドthe Battles『La Di Da Di』はなかなかに良い作品でした。
国内に目を向けるとDRY & HEAVYの最新作『IN TIME』が感涙の出来でした。この作品、レゲエではごくありがちなカバー作なのですが、もうDRYとHEAVYが一心同体で生み出す繊細なリズム表現が、カバーを超越し、オリジナルの域に持っていけているのが、本当に素晴らしい。ジャマイカで言えばこれ、本当にスラロビ、バレット兄弟レベル。彼らの表現力は芸術的ですらあります。
いやー、かなり長くなってしまいました。書き始めればいくらでも書けるので、もっと小出しにしろよって感じですよね。。。ここで取り上げた作品は単体でももっとおおきな視点で書けそうですし、来年はもっとこまめに書いていこうと思います。ということで、次回はBest Live 2015をお届けしますね。