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 いや~、面白かった。Hiatus Kaiyoteのブルーノート東京公演、初日1stステージ。オーストラリアの音楽シーンのなかでも、特にブラック・ミュージックを巧みに取り入れたバンドは、オリジナリティのあるアーティストが多いのですが、そのなかでも彼らはズバ抜けて個性的で印象を持っていました。でも、なかなかタイミングが合わず、ようやくライブを観ることができました。

 Hiatus Kaiyoteはメルボルン出身で紅一点のナイ・パーム(vo/g)、ポール・ベンダー(b)、サイモン・マーヴィン(k)、ペリン・モス(ds)の4人組。次世代フューチャーソウルとも評価される彼らですが、その音楽性を限りある言葉で説明すると、ジャズ、フュージョン、エレクトロニクスを織り交ぜながらも、基本的なグルーヴはネオソウルやR&Bで見られる揺れのあるバックビート。楽曲はエキセントリックに展開しながらも、しっかり歌を聞かせるサウンド……ってな感じでしょうか。

 ライブを観ると、彼らはとにかく、とんでもなくヘンテコなバンドです。4人全員が一人二役を演じるくらいに多彩で、個々が立った演奏をしているのに、不思議とアンサンブルとして成立しています。シンセとベースはひたすら同じフレーズを弾き、ドラムは特に支えたりせずに自在に叩く。でも、歌に全員が寄り添ってピッタリ合わさることで、グルーヴ感が生まれてくる。リズムはときに複雑になっていき、オーディエンスはどこで拍を捉えていいのか分からなくなることがあっても、自然とのれてしまう。例えるなら、DCRPGのポリリズミック感を多少整理し、踊りやすくした、みたいな。それを歌モノとして成立させるって、本当に凄いと思います。

 もうひとつ、彼らの演奏の最たる魅力は、豊かな表現力を持って、“configure=構成”された音楽を指向していること。彼らが目指すのは歌ありきの音楽。あらかじめ決まった歌があるということは、長さも音程も“configure”されているわけです。それでも、彼らの演奏を聴いていると”自在感”を感じられます。つまりは、とっても緻密なアンサンブルを構築しているのでしょう。ジャンルはまったく違いますが、彼らの演奏を聴いていて、ふと思い浮かんだのはToolでした。複雑な演奏と(決してミスが許されない)綿密なアンサンブルで、独自のポピュラリティを生み出す……抑制があるなかで、いかに自在さを表現するか、というベクトルにおいて、彼らは唯一無二のポテンシャルを持っていると思います。

 アメリカのブラックミュージックの新世代たちが、ジャズやR&B、ソウルといった音楽の伝統をどう捉え直すかでオリジナリティを追求することが多いのに対して、Hiatus Kaiyoteはオーストラリアという出自もあって、そういう伝統というしがらみから解き放れている。彼らはジャズ、フュージョン、ネオソウルといった米国音楽、さらにはアフロ・ミュージックを、本能的かつフラットにミックスできるからこそ、こんなにも個性的なサウンドが構築できたのだと、僕は思います。そして何よりも嬉しかったのは、こんなオーストラリアのこんなにもヘンテコ(褒め言葉)なバンドなのに、立ち見がでるほど大盛況であったこと。ちゃんと面白い音楽に対してアンテナを張っている人がたくさんいることも嬉しかったです。現場にいなかった方でも、このブログを読んで少しでも興味をもったら、まずは彼らの2nd作『Choose Your Weapon』をチェックしてみてください。