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 観てきました〜! James Blake2度目の単独公演@Studio Coast(初日)。彼にはこれまでに数回インタビューをさせてもらう機会があったので僕自身、思い入れのあるアーティストです。2011年のリキッドルームの以来なのに加えて(昨年のフジは観ていません)、2nd作『Retrograde』も素晴らしいアルバムだったので、やたらと期待してしまったのですが、そんな期待をひょいと超えつつも、2nd作の進化の跡をしっかり見せてくれました。ライブを観て感じたのは、音の視点が以前よりも外へと開かれてきたこと。これは演奏を積み上げてきた分の力量が、スケール感として表れた結果だと思います。演奏に関してもちゃんとリアルタイムで演奏しているのが彼らの強み。
要は同期を流さずにパッドを含めてすべて生演奏しているので、場に合ったリズム感を受け手と共有でき、それによって一体感を強められるものだと、僕は思っています。
例えば「Klavierwerke」の複雑なシンセのアルペジオも、ずーっと弾いていて、その姿はちょっとファニーなんだけど、やっぱり生演奏の熱は受け手として大きく感じる部分です。
 あとジェイムスのソウルフルな歌は、何度ライブで聴いても素晴らしいですね。ポスト・ダブステップはもちろん、シンセで聴かせるようなアーティストは、歌以外の“サウンドの加工”で個性を見い出すそうとする場合も多いですが、彼の場合は歌とピアノだけでも音楽として成立しているので、その時点で次元が違う。2nd作で加工したボーカルが減ったのも、歌で聴かせる意識がより強くなったんだと思います。ジェイムスって細めのウィスパー・ボイスにも聴こえるけど、意外と太い声なんですよね。ビブラートをよく使うあたりに、彼がD’AngeloなどのR&Bが大好きなのが良く分かります。決して分かりやすいメロディじゃないけど、耳に残るあたりもやっぱ天才だな、と。
あと彼らが使っている機材に関してもわりと詳しいので、その話も。“おっ!”と思ったのは、ギターのロブがMoogのTaurus(多分III)を導入していたこと。ちなみにジェイムスのライブ機材は見たところ前回と同じようでした。(シンセがNORD LeadとPianoにProphet-08、あとはボーカルにTC-HELICONなど)実はリキッドの来日タイミングでジェイムスにインタビューした際に、“東京で良いシンセ屋さんを知らない?”と聴かれて、FIVE G(外タレも来日するとみんな行くシンセの名店)を教えたのですが、
そのあとで彼らはシンセ探しに行ってMOOG Taurusの音に惹かれたらしく、『Retrograde』のベース音はそれがきっかけでTaurusを使ったんだよと、新作時のインタビュー時に話してくれて、ちょっと嬉しい思い出があったりも。ライブでの低域の質感も、1st作と2nd作の曲ではそこに一番の違いがあったようにも感じました。低音で一番壁が震えていたのも2ndの曲だったし、さすがTaurusって音でしたね。もちろんTaurus以外の部分で見ても、シンセやリズムの音色が本当に素晴らしいです。「Voyeur」で聴けたNORD Leadの暴力的なサウンドは鳥肌ものでしたし、ジェイムスが愛用しているProphet-08の音色使いも神がかっています。Prophetをあれほど感動的に聴かせられるのは、今は彼くらいしかいないでしょう。「Retrograde」での盛り上がりも涙モノでした。あの歌とこのサウンドがあれば、当分は向かうところ敵なしだろうし、「The Wilhelm Scream」を生で聴くと、やっぱり今の世代の歌だなって感じるんですよね。まだまだジェイムス・ブレイクの躍進は続くのだろうと確信できる、そんなライブでした。