Erimaj_Conflict Of A Man

 先日ジェイムス・ブレイクのライブ後にコットンクラブで観たのがこのErimajこれがかなり良かったので、メモ書きとして残しておこうと思います。僕自身、彼らのことをあんまり知らなかったので、ちょっとお勉強。Erimaj(エリマージ)はNYジャズ界隈で活躍するジャマイア・ウィリアムスを中心としたグループだそうで、ウィリアムスは同じジャズ畑の気鋭、クリスチャン・スコット(tp)や、最近来日して話題にもなったギタリスト、ロバート・グラスパーなどと共演するドラマー。その見た目は洒落た眼鏡と仕立ての良いシャツを着てて、ちょっとナードな雰囲気も余計に今っぽかったり。あと、ドラムだけじゃなくて、彼は頑張って(と、見えました)歌もいきます。グループの音源に関しては7インチがちょろっと出回ってたりはするようですが、アルバム『Conflict of a Man』自体はデジタルのみ(iTunesで買えます)しかし、最近のアメリカのアーティストはほんとフィジカル(CDやレコード)でのリリースが減ってますね。
 他のメンバーに関してもコリー・キング(tb)、マシュー・スティーブンス(g)らは、ウィリアムスと同じ界隈で活躍しているNYジャズの気鋭勢。ヴィンセント・アーチャー(b)は途中でギターからベースに持ち替えた経歴らしく、ケニー・ギャレットやマリーナ・ショウなど、もうちょっと大先輩たちとも絡んでいるようです。これらの4人がErimajのコア・メンバーで、先述したアルバムにはもう少し多くのミュージシャンが関与していました。ちなみにコア・メンバーはスティーブンス以外は黒人です。

 ライブの内容としてはジャズを主体にソウルやヒップホップが混ざったような、わりと若い世代(たぶん30代)のNYジャズという感じですが、非常に多彩で魅力的な演奏。ウィリアムスのドラムは4ビートからファンキーなものまでリズムがとてもしなやかで、そこに絡むアーチャーとスティーブンスのあんまりジャズっぽくない弦楽器隊の演奏がツボでした。スティーブンスは音響ロックっぽくなったり、はたまたジョンスコっぽく実験的にもなったりとするのですが、それらが黒っぽい端正なグルーヴの上で行われているのが、これまた何ともNYっぽいな〜と思ったり。多彩という面ではトロンボーンのキングが一番の大活躍かも。前にホセ・ジェイムスのライブを観たときにも思ったのですが、レイドバックしたフィールにトロンボーンってホント絶妙にマッチングするんですよね。それ以外にもフェンダー・ローズはもちろん、Macを持ち込んでMIDIキーボードでシンセも使ったりと、プロデューサー的な立ち位置でバンド・アンサンブルを色づけしているようでした。
 ベース弾きの自分としては、アーチャーの演奏もかなりよかったです。セミホロウ(空洞のボディ)のエレキ・ベースを使っていて、かなりファットな音なのもツボ。フレーズはたまに雑だったりするんですが、とにかくノリがやわらかいので、サラっと聴かせてしまえるあたりは、天性っぽい才能を感じました。演奏中、個人的にグッときたのはグシャっとインプロヴァイズしたかと思ったら、ブラックなフィールをグッと強めて、グルーヴ主体にもっていくあたり。しなやかで流れるような演奏の変化に、“懐が深いなぁ”と。演奏自体はわりと弱音が主体だったのに加えて、すでにジェイムス・ブレイクを観た後だったので、眠くなっちゃうかな〜とも思ったんですが、そのあたりは気鋭の若手だけあって表現も多彩。控えめかつグイグイと展開するアンサンブルに、最後まで惹きつけられました。ブレイクのあのライブを観たあとで、ここまで良いと思ったのだから間違いなく本物ですね。家に帰って調べて、すぐにiTunesでアルバム買っちゃったし。けっこう良いので、おすすめです。