東川町に実際に住んでみようと思ったのは二度目(201710月)に東川を訪れる前から考えていたので、前回東川に行ったときにアパートの物件もいくつか見ていた。物件を見ていると人気がある町で、単純にアパートが少ないこともあって、けっこうすぐに埋まっていく。僕たちが物件を見たときはこれから冬ということもあり(北海道では冬に引っ越す人は少ないみたい)、三件の内見ができて、そのなかに広くて友達がきても泊まれそうな良い物件があったので、ここをとりあえずキープしておいたら、同じアパートの隣の部屋も空くとのことだったので、ここで決めた。11月は東川にいけななかったけど、12月にはとりあえず入居しなければいけないので、実に3回目に東川にいくときは、もう引っ越し、ということになった。今思い返してみると、なんつースピード感だ。

 なんだか直前までこれから北海道に住むんだっていう認識があんまりなくて、友達に会うたびにはその話をするけど、まだその実感が自分のなかにはなかった。気持ちが変わってきたのは、ちょうど一週間前くらいに北国の生活の足になる軽自動車を買ったときだった。でも、そこからは不思議と北海道に縁が生まれた。たまたま知り合いのご親戚が引っ越すらしく、家財道具を処分するという情報を知って、もらいにいくというナイスなタイミングに巡り会ったり、そのときたまたま知り合った人が北海道の建築事務所のホームページなどを作っていたり、そこから札幌の知人を紹介してもらったりと、なんだか北海道に呼ばれている感を、勝手に感じたりもしていた。

 不動産屋からは”いつこっちに来られるんですか?”って、電話もかかってくるし、もう行くしかない。引っ越しは2017年12月6日。お金をセーブすべく、引っ越しの荷物は車にギュウギュウに詰めて、フェリーに車ごと乗せて行った。東京から大洗まで2時間半、大洗から苫小牧までフェリーで18時間、苫小牧から東川まで3時間半、まるっと一日工程。フェリーはとっても快適。ご飯がイマイチだけど大浴場もあって、さながら動くホテルという印象だ。初の北海道の雪道を夜中に走るのは避けたかったので、14時くらいに苫小牧に到着する便を選んだけど、結局不動産屋で鍵を受け取って、アパートに着いたのは20時くらい。まるで夜逃げでもしてきたかのように、真冬の夜に、男2人でせっせと車の荷物を部屋へと運ぶ。これ、今思うとだいぶ不審な人だったろうなぁ。っていうか、友達が付き合ってくれて本当によかった。

寝具やらテーブルやらを詰め込んだ生活品。

海上から見える、東北地方。

苫小牧から道央自動車道で、いざ東川へ。

 荷物を降ろしてとりあえず長い道中にささやかながらに乾杯する。で、飲めば行きたくなるのがトイレ。用を足してトイレのノブをヒネっても、水が流れない。何度金属の把手をひねれど、カシャっと手応えのない反応。あれ……もしかして、水道きてないんちゃう? いやいや、東川は上水道のない町。各建物ごとに地下に脈々と流れる大雪山系の湧き水を使うのだから、この部屋だけ水がこないってことは考えられない。で、台所や洗面台の下を覗いてみると、なんだかどこに出すねんっていう蛇口がたくさんある。“あ、これたぶん水抜き用のやつだね”と、住宅(というか建物)に詳しい友人が言う。寒冷地では不在の住宅などの水道管が凍らないために、管の中に溜まった水を抜くための蛇口があるらしい。なるほど。で、居住者のためのしおり的なクリアファイルの冒頭に、この地域で水道管を凍結させて破裂させた場合、すべて居住者の負担になります!と、仰々しく太字で書いてある。。。

夜遅くに荷物を降ろす最中の写真。静かな東川の夜に引っ越しのドタバタ音が響き渡る。。。

荷下ろし完了! だが、悲劇はその後に。

 とりあえず、住まいのサポートセンター(24時間対応)がファイルに挟み込んであったので、夜更けだけどとりあえず電話してみると、何だか電話口の担当者が全然状況を把握できてない……というか、まったく分かっていない。”で、お兄さんさぁ、この電話、どこで受けてんの?”と、聞くと”あ、このセンターは東京です。だから僕、北国のことはよく分からないんですよね~、明日北国に詳しい者から折り返しますんで”との対応……いきなり北国の洗礼を受けつつも、とりあえず目の前にある酒は進み、新居の前にある雪の壁に何度も用を足しにいき、移住初日の夜は更けていった。